ドラッカー:「経営者の条件」8つの習慣(意思決定)
前回までに「アクションプラン」を立てることは「経営者=リーダー」にとって必要不可欠のものであると説明しましたが、今回は4番目の「意思決定を行う」について話をすすめていきます。
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私の、200社超の中小企業のクライアントに接した経験
私は、1000社超の中小企業のクライアントをもつ会計事務所で長くプレイングマネージャをやっていたため数多くの業種、数多くの経営者と接してきました。自分自身ものちに100人、200人の中小企業の役員としてマネジメントを経験してきた体験から、ここでドラッカーがのべている「意思決定」とは別の意味で「意思決定をしない意思決定」を選択する経営者がいかに多いのかという現実を数多く見てきました。慎重であることはえてして「意思決定をしない積極的な意思決定である」こともこれを読まれる方は知っておいてほしいと思います。
そしてもうひとつ、日本の中小企業の中には、仮に、意思決定をしたとしても新年のあいさつで一回、「今年は、必ず売上を2倍にするように!」といった「意思決定」訓示を発表し、半年後にその訓示どおりにうごかない社員に対してきびしい叱責をとばすか、外部の知人に「うちみたいな中小企業にはなかなか優秀な人材はこないよ」と愚痴をこぼすという「経営者=リーダー」が多くいます。しかし、これも「経営者=リーダー」自らが「意思決定」を勘違いしているあらわれといえます。

ドラッカーは「意思決定」を、このように述べています。
意思決定が意思決定足るために必要なこと
「意思決定」は、「意思決定」たるためには、次の四つのことを同時に決めて意思決定といえる。
(1)実行の責任者
(2)日程
(3)影響を受けるがゆえに決定の内容を知らされ、理解し、納得すべき人
(4)影響を受けなくても決定の内容を知らされるべき人』
つまり、「意思決定」とは「何か」を「やれ!」と号令をかけるだけでなく、同時に上記の(1)~(4)を決定して、はじめて、「意思決定」といえるということです。
そして、リアルの企業の実態として、
「組織で行われている意思決定のうちあまりに多くが、これらのことを決めていなかったために失敗している」
と、批判的な注意をしています。つまり、「意思決定」を正しく理解していない、当たり前に行われいない、企業が多いことを嘆いています。
意思決定のイメージで誤解されていること
ドラッカーは、さらに別の意思決定の側面、「意思決定」という概念が誤解されていると指摘しています。「意思決定とはトップが行うものであり、トップが行う意思決定だけが重要であるかのごとき議論は大きな間違いである。組織としての意思決定は、スペシャリストから現場の経営管理者まであらゆるレベルで行われている。知識を基盤とする組織では、それぞれの意思決定が重要な意味をもつ。知識労働者とは、自らの専門分野については誰よりも知っているべき者であり、その意思決定は、組織全体に大きな影響を与えるものである。したがって、意思決定の能力は、組織のいかなるレベルにおいても、致命的に重要なスキルである。知識を基盤とする組織では、このことを周知させておくことが特に重要である』
的確な「意思決定」は、「トップの仕事だ!」という「責任放棄」の風潮は、得てして、社長が誤った「意思決定」をしても、内心はせせら笑いながらも、だまって服従するそぶりを見せる「幹部・スタッフ」。さらに、後日、社長の「意思決定」が失敗におわると、それ見たことかと、社長の無能さを酷評し、留飲をさげるという明らかに仕事に対する裏切り行為を平気で行っている「幹部・スタッフ」も数多くいます。
本来、仕事は、各々が担当する部署でスペシャリストであらねばなりません。その仕事であきらかに予想される誤った「意思決定」を盲目的に実行することは、自分の職務に対する対する背任行為ということです。
「定期的に見直す」ことの大切さ
最後に、ドラッカーは、「意思決定」を「定期的に見直す」ことの大切さを重要なポイントとして説明しています。
『意思決定はすべてそれを行うときと同じ慎重さで、定期的に見直さなければならない。そうすることで、間違った決定も害をもたらす前に修正をすることができる。このことは、意思決定において前提から成果にいたるあらゆる段階についていえる』
『定期的な見直しは、人材のリクルートと昇進の人事において特に重要である』

「人」、「物」、「金」、「経営者=リーダー」が行う「意思決定」の3大項目です。このなかでも「人」は、組織の活性化にきってもきれない大切な項目ですが、もし「採用」や「昇進」の意思決定が失敗であっても、定期的に見直せる中小企業は、それほど多くありません。規模が小さくなればなるほどこの傾向はつよくなります。
その理由は、中小企業特有の代替人員の不足という問題が背景にありますが、そういっても、それで良いかというとそこにとどまることは許されません。ここでは、各々の企業でとるべき解決策はちがいますからすべての企業に共通する答えはありませんが、解決のための「トライ&エラー」をつづけなれればならないことだけは共通しています。
ドラッカーの上記のこういった意見は、特別、目新しいことでも、難しいことでもありません。人間は、常に間違いをおかすものという前提で、その間違いをいかにして早めに軌道修正する仕組みや企業風土をつくれるか、が大切であるということになります。
これは簡単なようでいて、結構、難しいものかもしれません。風通しの良い組織をつくろうとすると「経営者=リーダー」の「プライド」や「組織の統制」といったことも問題なってくるからです。
しかし、これは組織の運命を握る鍵であることはまちがいありません。いわばこれこそが「経営者=リーダー」の力量であるのかもしれません。
