ドラッカー「シアーズ・ローバック社の顛末「イノベーションの衰退」」

前回のメルマガに続いてもう一度、シアーズ・ローバック社のことについて書いていきます。

なぜ、同じ話題をつづけるかといいいますと、現実の世界は、テレビや映画のドラマのように簡単にハッピーエンドのまま終わないからです。

 

たとえ一時期ハッピーな結果に巡り合ったとしてもドラマの登場人物たちの人生はその後も続いていきます。

 

そしてそこには、永遠のハッピーエンド状態は、ありません。

 

 

「山あり、谷あり」

「楽あれば、苦あり。苦あれば、楽あり」

まさしく

【ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。 】・・・・<方丈記>

 

というのが世の摂理です。そういった意味で、、その後、どうなっていったかを少し、振り返ってたいと思います。

 

 

さて、本題を、はじめていきましょう。

 

 

第1次成長期でシアーズ・ローバック社がジュリアス・ローゼンワルドの手によって近代企業に変革した時代を第1期、成長期と呼べば、

第2期、成長期は1920年代中頃、ロバート・E・ウッドという次世代の経営者の手によってもたらされれました。

第2期成長期は、第1期成長期から数えると約30年もあとになります。10年ひと昔というように30年もたつと人々の購買行動、生活習慣、価値観は、大きく変化していきます。

 

30年もたつと自動車が普及し、農民はすでに孤立した存在ではなくなっていました。彼らも自動車のおかげで容易に町で買い物ができるようになっていました。

 

彼らの特徴であった、孤立した独自の市場という価値はちり芥のごとく消えていました。

第2期成長期を生み出したロバート・E・ウッドは都市の下層階級の所得が増え、中流や上流階級の生活スタイルと生活水準に同化しつつあり、同じ商品を欲するようになっていることに気づきました。

 

国全体が急速に一つの同質的市場となってきたということです。しかし、まだ、国全体のビジネスの流通システムは、旧態依然として孤立した階層別市場をターゲットにしたものが多かったのです。

 

 

彼は、シアーズ・ローバック社の事業スタイルを自動車をもった農民と都市の市民の両方を顧客とするべく、「通信販売」から「店舗による小売業」に転換するという意思決定を行いました。

 

 

しかし、それはたくさんの課題を克服しなければならない困難に満ち数々のイノベーションが必要でした。

先ず、

(1)商品を開発すること

→農民以外の都市の下層階級でも購入できる大衆商品の開発。シアーズ・ローバック社の顧客は、農民や下層階級の消費者でした。

(2)商品を大量に生産できるメーカーの育成。

→店舗を構えることは、通信販売の何倍もの商品が必要でした。

(3)店舗管理ができる人材、特に店長と売り場主任の育成

→短期間に大量の人材を育成できるシステム。それも、店舗経営管理者が必要でした

(4)組織構造の全面的な見直し。

→通信販売は中央集権的組織でしたが店舗運営分権組織で運営しなければなりません。このため分権組織への変更が必要でした。各店舗に自由裁量を与えなければ店舗運営は、できませんでした。

(5)人事評価制度の見直し。

→分権組織を生産的なものするためには、人事評価制度を成果とインセンティブを付与する評価制度にしなければなりません。

(6)店舗のコンセプト作り。

→短期間にライバル店舗との差別化、独自性を構築する能力と仕組みが必要でした。

 

 

このように、トップマネジメントが「通信販売から店舗小売業に変える」という【意思決定をする】ことで、必要とされるイノベーション(変革)は、数限りなく発生してきました。

 

 

通常の企業なら、やるべき、これらのイノベーションを列挙するだけで、その困難さを考え、通信販売から店舗小売業へ転換する意思決定を撤回するかと思います。

 

 

しかし、シアーズ・ローバック社は、新しいマネジメントの意思決定を、組織全体で受け入れ、数々のイノベーションを同時平行的に実行しました。

 

 

恐るべき企業オペレーションの変革ですが、この意思決定のおかげでシアーズ社はその後の世界的不況や第2世界大戦の困難な時代にあっても利益をだし続けることができました。

 

トップマネジメントの未来を見通す力、顧客価値がどこにあるかの分析、そして、それを現実化する企業としての柔軟性。賞賛に値します。

 

 

が、その後、それだけで終わらないのが、現実の世界です。

 

自社のビジネスが継続していくとき常に消費者の購買行動は時代とともに変化しつづけます。この環境の変化につねに適応しつづけていかなければ企業は瞬時に凋落し、市場から淘汰されていきます。

 

シアーズ社は、1980年代に経営難に陥り、Kマートに吸収合併されています。

 

 

あれほど、自らの組織を顧客価値優先で、生まれ変わる柔軟性があった企業ですら、その変革の遺伝子を後世の経営者たちが受け継いで行くのが難しかったというあらわれです。

 

 

アメリカを代表する規模に成長したシアーズ・ローバック社も、いつのまにか官僚主義に陥り、顧客価値がどこにあるのかを分析できず、イノベーション(変革)力が弱くなったために、ついにはKマートに吸収合併され、違った形で存続する形になりました。

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