ドラッカー:「意思決定をしない意思決定」|LBコンサルティング

今回は「意思決定なかの「意思決定をしない意思決定」」について話をすすめていきます。

意思決定をしない意思決定

私は、1000社超の中小企業のクライアントをもつ会計事務所で長くプレイングマネージャをやっていたため数多くの業種、数多くの経営者と接してきました。自分自身ものちに100人、200人の中小企業の役員としてマネジメントを経験し、ここでドラッカーがのべている「意思決定」とは別の意味で「意思決定をしない意思決定」を選択する経営者がいかに多いのかという現実がたくさんあるかということも知っておいてほしいと思います。意思決定を先延ばしにし、永遠と意思決定をしないことは衰退への一里塚です。

日本の中小企業の実体

日本の中小企業の中には、仮に、意思決定をしたとしてもそれを「号令」「叱責」「減給」だけで達成しようとしがちです。
新年のあいさつで一回、「今年は、必ず売上を2倍にするように!」といった訓示めいた「意思決定」を発表し、その後、具体的な手を打たない「成行き任せの経営」をして、目標を達成できない社員を1年後にしかりとばす。

そして「うちみたいな中小企業にはなかなか優秀な人材はこないよ」と愚痴をこぼす、

こんな中小企業は山ほどあります。もし、これを例外的な企業経営だと思われるのでしたらあなたはよっぽどめぐまれた組織に属しているといってもいいと思います。

ドラッカーは「意思決定」を、このように述べています。

「意思決定」が「意思決定」たるために必要なこと

『「意思決定」が「意思決定」たるためには、次の四つのことを決めなければならない。

  1. 実行の責任者
  2. 日程
  3. 影響を受けるがゆえに決定の内容を知らされ、理解し、納得すべき人
  4. 影響を受けなくても決定の内容を知らされるべき人』

つまり、「意思決定」とは「何か」を「やる」、とか「やれ!」とかただ号令をかけるだけでなく、同時に上記の(1)~(4)を決定して、「意思決定」が現実の組織の中で動く仕組みをつくって、はじめて、「意思決定」といえると指摘しています。

現実の企業実態

そして、ドラッカーは、現実の企業実態が、

「組織で行われている意思決定のうちあまりに多くが、これらのことを決めていなかったために失敗している」

と、批判的な注意をしています。当たり前のことが当たり前に行われない、このような批判にさらされる企業がなんとも多いことか、と。

もし、上記の(1)~(4)の仕組みを作らず、「号令」だけで終始するような「意思決定」なら、まだ何も言われない会社スタッフのほうが、自由に行動ができるのできるのですから・・働きやすいのかもしれません。

「意思決定」という「概念」の誤解

ドラッカーは、さらに別の意思決定の側面、「意思決定」という「概念」が誤解されている点について注意を促しています。

意思決定とはトップが行うものであり、トップが行う意思決定だけが重要であるかのごとき議論は大きな間違いである。組織としての意思決定は、スペシャリストから現場の経営管理者まであらゆるレベルで行われている。知識を基盤とする組織では、それぞれの意思決定が重要な意味をもつ。知識労働者とは、自らの専門分野については誰よりも知っているべき者であり、その意思決定は、組織全体に大きな影響を与えるものである。したがって、意思決定の能力は、組織のいかなるレベルにおいても、致命的に重要なスキルである。知識を基盤とする組織では、このことを周知させておくことが特に重要である

中堅幹部の「責任放棄」

的確な「意思決定」は、「トップがすべき仕事だ!」という考えはトップ以外の中堅幹部の「責任放棄」であるということです

このような「責任放棄」的な風潮は、得てして、社長が誤った「意思決定」をしても、内心はせせら笑い、だまって服従するそぶりを見せる「幹部・スタッフ」が横行し、組織はまちがいなく衰退する共同体となります。さらに、後日、社長の「意思決定」が明確に失敗におわると、それ見たことかと、社長の無能さだけを酷評し、留飲をさげるという明らかに仕事に対する裏切り行為を自ら行います。

本来、仕事は、すべての担当者が担当する部署でスペシャリストであらねばなりません。担当の仕事であきらかに予想される誤った「意思決定」を盲目的に実行することは、自分の職務に対する対する背任行為なのです。

飛行機の機長の例

わかりやすい例で言えば、例えば

「飛行機の機長があきらかにまちがった方向に向かった航路へ飛ぼう、または悪天候予測を無視して、スケジュール重視だけで意思決定をしているにもかかわらず副操縦士、やCAまた管制官などがその航行を黙認するのに似ています
これは、機長が無能であるのはもちろんですが、副操縦士、やCAまた管制官なども「意思決定」を放棄したということです。

 「意思決定」を「定期的に見直す」ことの大切さ

最後に、ドラッカーは、「意思決定」を「定期的に見直す」ことの大切さを重要なポイントとして指摘しています。

『意思決定はすべてそれを行うときと同じ慎重さで、定期的に見直さなければならない。そうすることで、間違った決定も害をもたらす前に修正をすることができる。このことは、意思決定において前提から成果にいたるあらゆる段階についていえる』

『定期的な見直しは、人材の採用と昇進の人事において特に重要である』

これは、いかに人間が「神」のように万能でないという当たり前の人間観にもとづいた指摘です。「経営者=リーダー」も人間です。常に、間違いのない意思決定を行うなど不可能です。

「意思決定」を常にチャックし合い、議論できる風通しの良い企業風土をつくれるかは、「経営者=リーダー」の力量にかかっています。

ドラッカーの上記のこういった意見は、特別、目新しいことでも、難しくもないと◯◯さんも思われるはずです。人間は、常に間違いをおかすものであるという前提で、その間違いをいかにして早めに軌道修正する仕組みや企業風土をつくれるか、「経営者=リーダー」にとって大切です。

これは簡単なようでいて、結構、難しいものかもしれません。風通しの良い組織をつくろうとすると「経営者=リーダー」の「プライド」や「組織の統制」、「企業風土」といったことも問題なってくるからです。

しかし、これは組織の運命を握る鍵であることはまちがいありません。いわばこれこそが「経営者=リーダー」の力量であるのかもしれません。

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