コラム「社長の試練」5:『見』(真実を見定める目)ep3借金は病なのか?・・
『見』(真実を見定める目)
小規模中小企業は2016年時点で359万社、359万人の社長が日本には存在します。日本人の人口が1億2693万人で、人口比で約3%です。いわゆる労働者=雇われる側が残り97%です。何故、このことを改めて記載するかといいますと人口の3%に過ぎない人たちが日々直面する問題を残り97%の労働者側の人間は理解しているようでその本質は分からないということを認識しておく必要があります。つまり、経営者は、経営の核心にかかわる「人、モノ、金、情報」にかかわることは、どんな困難な場面でも「97%」の人たちの意見を鵜呑みにしてはいけない、ということです。
ep 3 : 借金は病?
たとえば私の知っている創業間もない、ある若い不動産会社経営者は、創業当初は、仲介業だけに力を入れせっせと賃貸アパートや土地、建物の売買の仲介業務に力をいれていました。10万の家賃なら仲介手数料10万円、売買案件なら3000万円の物件で最大180万円の仲介手数料が手に入る。この仲介というビジネスモデルは仕入ゼロで、ビジネスリスクゼロですが万人に売れそうな物件は、同業者で取り合いになりますので爆発的に儲けることはできません。
2~3年後、彼は、
「いや、最初はプロジェク資金500万を銀行から借りるときでさえ借用書へ印鑑を押すときに、あっ、もしこれで失敗したら、人生、終わりだ、家族は離れ離れになり、2度と妻や子供の顔が見れなくなる、もうだめかもしれないと思いましたよ。それが今じゃ、2億、3億の不動産プロジェクの借入を申込むときも、もう、何億円でも印鑑、おせちゃう感じだから、変われば変わるもんですよ」
と笑っていた。もちろん、彼は、不動産開発分譲をいくつも行い、大きな利益を得ていた。
リスクを取らないと良い物件は取り扱えないし、儲けも大きく生み出せないと彼は、身にしみて感じていた。
これは飲食店やその他のサービス業や製造業でも原理原則は同じである。
自己資金があればそのお金でやればよいのかもしれないが一般的には金融機関から借入し、2店、3店と出店して行かなければ、事業の拡大は望めません。つまり、ビジネスは「投資」をしなければ、迅速な拡大サイクルに乗っていきません。
これが「雇われる側=サラリーマン」には、どうしても理解できない世界です。
彼らが、一生に一回、住宅ローンを組んで「持ち家」を持つことに対しては、それが愚かしいと言う人は少なく、賞賛を得ます。
「いや、頑張ったね」
「おめでとう」

このように友人知人、親戚縁者は賞賛しますが、この住宅ローンほど愚かしい「借金」はありません。たとえば一般的なファミリー向け新築マンションを4000万円で購入し、1年後に何らかの事情で売りに出すとすればその値段は3千万円以下に下落しています。2年後に2000万に。冷静にこれを家賃に換算すると1000万円÷12ヶ月=83万円の家賃という計算になります。もし家賃にこれだけ払わなければならないなら彼らは二の足を踏むでしょう。現実にはこれが住宅の市場推移です。冷静にこのような計算をする方はいません。逆にこのようなアドバイスをしてくれる知人は忌み嫌われるだけですので当事者の耳に入ることはありません。
事業用の「投資」は、利益を生み出すためですから「住宅ローン」とはまったく違う性質のものです。4000万円の借金=投資なら、それは4~5年後に逆に4000以上の利益をもたらす可能性があります。
事業用投資=借金で大切なことは、「借金」の大小ではなく、投資しようとするときの「市場環境分析」、「内部分析」の有無であり、その精度やノウハウです。
気をつけるべきポイント
残念ながら、私が出会った小規模中小企業の社長で「投資」を行うとき、まるで宝くじや馬券を買うような勢いで、何千万円の借金の契約書に押印をする方がどんなに多かったことか、借金の大小より、このことに気をつけるべきです。信じらないかもしれませんが、人間は理性的のようでいて、大きな問題に関しては「感情的」な価値によって決定してしまうのが、あまりに多いことに改めて驚きを禁じえません。

