コラム「社長の試練」1:人一倍働いているのに何故幸せになれない社長

第一章 人一倍働いているのに何故幸せになれない

社長と従業員の違い

中小・小規模会社の経営者である「社長」は、「自分は、人一倍(多くの場合、自分の社内で比較している)働いているのに何故、いつまでたっても幸せになれないんだ」
と眠れない夜をすごす人が多い。社長の心配の多くは、「金」と「人」の問題である。日本の企業数は2016年時点で359社、つまり社長は359万人(総務省・経済産業省「平成24年、28年経済センサス‐活動調査」)、日本人の人口1億2693万人の人口比で約3%である。
 もし自分が雇われている側でしたら、職場で1日8時間勤務すれば、月末には約束された「お金」が給与明細書とともに手元に入ってくるのを疑う人は少ないでしょう。こういった「雇われる側の人間」にとって「お金」は、その金額の大小はあれ、「誠実」に「約束した業務」を果たしていけば、かならず、手にできる「確実」なものだと考えています。
しかし、会社を経営する側、つまり中小・小規模会社の経営者にとって会社運営に必要な「金」は、毎月かならず、会社に入ってくると楽観できるものではありません。「不確実」で「流動的」な「不安」と「心配」のみなもとです。
 それでは、何故、そんな「不安定」な立場に自分を置く必要があるのでしょう。それは、たまたま、親の代から「事業」を行っていたり、サラリーマンより、もっと豊かな生活を夢見たりしてリスクをとって独立して「事業」を起こして、日本人の約3%の人間の仲間入りを果たしたためです。
 私は、決して、こういった独立心にあふれる人間の生き方を否定するためにこの文章を書いているのではありません。人間の歴史においてほとんどの人は、「農業」、「漁業」、「職人」、「商人」として「個人事業主」として人生をまっとうしていました。いわば独立した「経営者」=「事業家」として生きていくのが普通の人生でした。それが文明の発達にしたがって、いつのまにか「分業化」が進み、「雇われる側」と「雇う側」に区分され、圧倒的に「雇われる側」の人間が多くなっていきました。そしてこれら「経営者」=「事業家」たちが新しいことへ挑戦したことによって電気、車、飛行機、コンピューターなど人類の進歩が成し遂げられてきました。私たちの身の回りで当たり前に利用しているものはすべてこういった独立した「事業家」によってもたらされているのです。
 私は、CTP(認定事業再生士)としての仕事柄、一般の人より、彼らの苦境を、数多く見聞きしています。、本来、尊敬されるべきこういった「経営者」=「事業家」の中に、神経症寸前まで追い詰められ、人生の不運に遭遇している姿を見るのは社会の大きな損失だと思います。


 日本の小規模・中小企業の現状は、猛スピードで暗い荒野を運転している姿に似ています。何故、このようなことが起こるのでしょうか?もし、団体のプロスポーツならチーム内に「コーチ」「トレーナー」を備え、選手個々のトレーニングメニューや体調管理、フォーム修正、競合チームの長所、欠点、相手戦術への対応策などを分析して勝利を目指して戦います。またゴルフやテニス、ボクシング、格闘競技など個人競技のプロスポーツでも、同様のことが行われています。本当なら小規模・中小企業でも、プロスポーツチームと同じ組織としての共通の特徴があるのですから、「コーチ」「トレーナー」的なものを身近に置くようにするのが当たり前のはずですがそう考える経営者は少ないのが実情です。

 

税理士事務所への過度の期待

 なかには
「いや、うちは税理士先生にその役割をおまかせしている」
 「中小企業診断士にその役割をおまかせしている」

という社長様がいらっしゃいますが、残念ながら、それは見当違いも甚だしいと言わざるを得ません。「税理士事務所」の大半は、10人未満の零細事業者で、なおかつ小規模零細企業の担当をするのは、いつか自分も税理士になりたいと考えている、いわゆる税理士「受験生」がほとんどです。彼らの優先事項は「税理士合格」ですから、その年に自分が狙っている科目、たとえば「簿記論」なら「簿記論」、「財務諸表論」なら「財務諸表論」に関する情報や学習が最優先事項であり、情報収集ネットワークも一般企業の営業マンと比較しても格段に狭く、偏っています。
そういった彼らが相手にする小規模零細企業の社長は生き馬の目を抜くビジネスの荒海で日夜、「金融」、「労務」、「マーケティング」などの難問にさらされているわけですから「コーチ」、「トレーナー」の役割など望むべくもありません。

 

 私が、若い頃、お世話になった税理士事務所の所長先生は、アドバイスを求めて来訪する中小企業の社長に、
 「粗利が前期と比べて、 ○%低下していますね。ここをなんとかね、改善しないと、販売管理費も圧縮しなければ、乗り切れませんね」
 と判で押したようなアドバイスをして、あとは新聞にある景気報道や税法改正の話題で話を盛り上げ、

 「もし、少しでも黒字にしたければ減価償却費費で調整しましょうか?そうすれば赤字は防げますよ」

と恩着せがましく付け加えるのが常でした。この程度の、底の浅い経営指導でよくなる企業など存在しません
 
 社長や行政側は、たてまえは「税理士事務所」は、「税金の専門家」であり、「経営」の専門家ではないということを知りながら、ことあるごとに「経営」の専門家のような役割を期待し、それを盲信する傾向が多く見受けられます。税理士事務所の所長先生は小規模中小企業の経営者であり、社会的に義務付けられている従業員教育は最新の「税法」の習得・浸透です。「経営」に必要な「金融」「労務」「マーケティング」などは、「税法の専門職」である彼らにそれを強制的に研鑽する必要はないし、「税理士資格受験生」であるスタッフは、それを深める義務もないという現実を知っておかなければなりません。

 また、そのことを理解して、中小企業診断士と契約して「経営」を見てもらっている会社もありますが、なかなか成果を出しづらい顧問契約であるのが実情です。それは、社内の問題をプロジェクト型で改善していく契約でなく、月に1回、経営全般のありかたを相談するという契約がほとんどですので、アドバイスする側も、総論アドバイスに陥りがちです。そうするとその効果は個々の「社長」の真剣さにかかっているといえます。

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