企業経営の視点からみたロシアワールドカップ日本代表組織運営手法|LBコンサルティング
企業経営の視点からみたロシアワールドカップ日本代表
ハリルホジッチ解任理由
今日現在、ロシアワールドカップ日本代表は予選リーグを突破し、決勝トーナメント16強へ駒をすすめた。
日本サッカー協会は、ロシアワールドカップ本戦がはじまる2ヶ月前にハリルホジッチ監督を解任し西野監督へ変えるという大博打に打って出ました。
田嶋会長が挙げる、解任の理由は
「選手とのコミュニケーション、信頼関係が薄れてきている』
というものでした。
ハリルホジッチの功績
ハリルホジッチが日本サッカーにもたらしたのは、ブラジル大会の反省を踏まえて、今までの価値観、ポゼッションサッカーの否定だった。

「縦に速いサッカー」
「デュエル」(1対1の戦い)
この二つのスローガンは、これまでポゼッションを重視し、ボールを支配することを追求してきた日本、「自分たちらしさ」という表現で、ボールゲームにこだわりすぎ、目を覆う惨敗を喫し、アジアでは通用してもワールドカップレベルのサッカーでは勝てない日本の刺激になった。
まさしく企業経営でも似たことはあります。
「自分の好きなもの」
「自分の得意なもの」
「自分らしさ」
にこだわるあまり、市場のニーズを考慮しない製品戦略から失敗する例。
この当時、ハリルホジッチは勝つためのポイントを的確に言い当てています。
「ボールを持っているときの方が、それを失うことで失点する可能性が高い」
「相手が準備できない間に、速い攻撃で得点の可能性を上げる」
UEFA EURO 2016年のドイツ代表の教訓
ロシアワールドカップ予選リーグで前回大会優勝国ドイツがグループ最下位で敗退したのは、まさにこのことでした。「自分たちらしさ」という表現で、ボールゲームにこだわり、予選リーグ最終戦、ポゼッション70%と圧倒的にボールを保持しながら、韓国に破れていきました。
ドイツは、ブラジル大会優勝国として、この大会の前のUEFA EURO 2016年 サッカー欧州選手権・準決勝で0ー2でフランス代表に敗れたときも、圧倒的なボールポゼッションで攻勢を続けたが敗北しました。
そのときドイツ代表のレーヴ監督は、
「全ての面でフランスを上回っていたが、結果だけが違った」
と答えている。しかし、そうだったのだろうか?そこに慢心がなかったのだろうか?
『自分たちらしさ』にこだわって敗北。
企業経営でも「自分たちらしさ」にこだわり、市場から撤退した企業は山ほどあります。
一方、EURO2016年を制したそのときのポルトガル代表監督のフェルナンド・サントスは、
「たとえ見栄えの悪いサッカーと非難されようとも結果を第一に求める」
と繰り返し述べ、メンバーにベテランと若手、国内組と海外組を絶妙なバランスで選考した。対戦国によって、柔軟に選手もかえ、誰が出ても一定レベルのパフォーマンスを発揮できる実力差のない選手を揃え、調子が悪い、機能していないと見るや試合ごとにスタメンを変えた。そして、ボゼッション保持率にもこだわらない守備重視の泥臭い試合運びからスキを見てのカウンターアタックで勝利を上げてきました。
「美しく戦って負けるか、見栄えが悪くても勝つか」
このように見るとハリルホジッチが掲げた戦略は、勝利を得るためには正しい戦略だったと言えます。その結果、アジア予選を勝ち上がり、ロシアワールドカップ出場を勝ち取ったのですから。
トップダウン方式の功罪
しかし、その後の準備期間で1度も勝てず、監督解任という憂き目にあいました。この出来事は、まさしく日本的な理由だと感じます。
田島会長が言った「選手とのコミュニケーション、信頼関係が薄れてきている』という理由。
つまり、ここに、長きに渡って「トップダウン」で組織を運営されつづけることに対する日本人の拒絶反応が垣間見えます。日本人の文化、風土のなかには「ボトムアップ」がとりいれられなければ機能しないという特徴があります。いわゆる「根回し」という時間と労力を潤滑油としていれていかなければ、日本の組織は、機能不全になります。
ハリルホジッチの人間性を、クロアチアのスポーツ紙『Sportske Novosti』(スポルツケ・ノヴォスティ)のトモ・ニチョタ記者は、あるインタビューでこう答えています。
・・・・彼は、誰にも譲ろうとはしないんだ・・・・
「何をやるべきか、それを実現するためにどうすべきかを知っている素晴らしい監督だ。フェアな人物でもある。しかし、すべてを彼が欲するがままにさせて欲しいタイプで、誰にも譲ろうとはしないんだ。そのことが頻繁に問題となり得るし、実際に問題になってきた」
こういったスタイルの指導者は、短期間のプロジェクトでは能力を発揮できても2年、3年とトップで君臨するためには、圧倒的な結果をずっと残し続けなければなりません。もしそうでなければ「出る杭は打たれる」のことわざどおり、まわりから「打たれ」、信任を失ってしまいます。企業経営でもそうです。
ハリルホジッチは、アジア予選を突破したところまでは「出過ぎた杭」でした。「出過ぎた杭」は、「一目置かれる」存在として誰からも不平を言われませんが、結果が平凡になるとすぐに信任を失っていきます。
具体的には、
予選も終盤はイラクに勝ちきれず、サウジアラビアに敗れた。その後も弱小ハイチに引き分け、ブラジル、ベルギーには子ども扱いされています。年末には韓国に、1−4と屈辱的な負け。そしてその後も敗戦が続きました。ハリルホジッチにはロシアワールドカップ本戦に向けてなにか試験的なものがあったのかもしれませんが、それは、彼の頭の中にだけあり、周囲の理解を得る努力を怠っていました。
日本文化・風土とボトムアップ方式
これでは、「トップダウン」方式の組織運営は機能しません。この結果に陥った理由はいろいろあるのでしょうが、戦いにおいてはその「理由」を考慮しながら「戦術変換」を行う必要があります。いわゆる「日本的なボトムアップの組織運営」へのシフト・チェンジが必要だったのだと思います。しかし、ハリルホジッチは頑なにそれを拒み、「トップダウン方式」で組織を引っ張ろうとし、解任されました。
西野監督の強み
あたらしく就任した西野朗監督を評して本田選手は

「人の意見を受け入れることに西野さんの強みがある」
と言っています。つまり、「ボトムアップ」方式による組織運営です。そこには日本代表に選ばれる選手は、各々サッカーに対する強い見識をもっているのにもかかわらずハリルホジッチは、その見識を受け入れてこなかった、という裏返しの感想に聞こえます。また、ハリルホジッチが唱えた「デュエル」の強化は、日本の重大な欠点なのかもしれません。しかし、これも永遠の課題でありすぎて、身体能力に劣る日本選手には、そんなに簡単に克服できるものではないという現実もありました。
「デュエル」が劣っているのなら、どうすべきか。 コロンビア戦に勝った後、長谷部誠は、こう言っていました。
「自分たちは相手を研究して、自分たちのやり方を決めるサッカーをやっている」
「自分たちのサッカー」を声高く主張して戦うのではなく、相手のやり方、相手の選手の情報を詳細に分析して戦う。ワンパターンの縦に早いサッカーだけでなく、日本人に馴染みの深いポゼッションサッカー、つまりパスサッカーを軸に縦に早いサッカーを行うという、極めて現実的な戦略をとったことが今回のロシアワールドカップ予選突破の要因だったろうと思います。
自分たちの長所と勝つために取るべき対応を融合させたのです。
この結果、強豪国との戦いに1勝1分、そして仕上げに「目的達成」のために、悪評高き、時間稼ぎをしたポルトガル戦。
トップの謝罪
そこから、一夜明けた29日、練習前に西野監督は選手、スタッフに対してポーランド戦終盤の時間稼ぎに対し、
「こういう場所(16強)に来たにもかかわらず、素直に喜べない状況をつくってしまったのは申し訳なかった」
と謝罪を行っています。
これこそが日本人の心を揺さぶるトップの責任のとり方です。「ボトムアップ」方式で組織運営をするうえで大切な、、チームをさらに強くするリーダーシップの手法だと私は感じます。
この西野監督の「ボトムアップ方式」により、心をゆさぶられた選手は、次のベルギー戦、私は日本が勝利すると確信します。
後日結果フィリップ・トルシエ元日本代表監督
http://number.bunshun.jp/articles/-/831274
「ベルギーが勝ったのではなく、日本が負けたのだ」
「まず言えるのは、準々決勝進出という大きな目標を前に、日本は経験不足と未熟さを暴露したことだ」「残り時間20分で2対0でリードしたチームの勝率は80%であることだ」
「最後のCKもショートにするとか、やり方はいくらでもあった。」
「外国人監督だったら、ああいったやり方でCKを蹴らせることなど考えられない。あの状況では選手にもっと違うプレーを求める。」
「しかし西野監督には変えられなかった。彼は別のやり方を知らなかったからだ。」
「日本には自分たちのスタイルを貫き通して勝つか、貫き通して負けるかしかなかった。それが実際に起こったことだ
